今村祐嗣のコラム

なんとなくいいもの -木炭-

今、木炭が燃えている。バーベキュウ用の木炭がきれ いな箱に入れられてDIY の店に並べられており、新聞や 雑誌では水道水の消臭やおいしくご飯を炊くときに木炭 を入れる話題が提供され、木酢液の利用特集が組まれた りしている。原料についても、最近では、建築解体材や 林地残材、剪定枝や草本類、モミガラなどの農産廃棄物、 あるいは産業廃棄物が木炭に変換されている。炭焼き窯 の普及に力を注いだとされる弘法大師もびっくりという ところであろう。
 木炭は燃えなければ腐ることも、シロアリに食害され ることもないため、木材中の炭素の永久的な固定法であ り、地球温暖化防止の一翼を担う点からも環境に調和し た材料である。一方、木炭製造時の焼成処理では、熱処 理という比較的エネルギー消費や環境負荷の低い手法に よって木材から木炭に変換できる長所をもっている。
 先般、テレビでわれわれの木炭の研究が紹介される機 会があったが、3 ケ月たった今も問い合わせに追われて いる。そのほとんどは、水質や空気の浄化であったり、 土壌改良や住宅床下の調湿作用など、科学的にみても納 得できるものであった。染め物や印刷技術を応用して壁 紙に加工したり、感心させられるアイデア商品も多く見 せていただいた。ただ、こちらの勉強不足もあろうが、 解釈に悩むものもいくつかお話しいただいた。それは木 炭から“波動”が出てくるというのと、マイナスイオン の放出である。測定法もさることながら、どういうしく みでそのような現象が生じるのか、もう一つ判然としな い。
 同じことが、木酢液にも感じられる。食品加工用の燻 液、土壌改良剤、植物活性剤、消臭剤、除草剤など広い 用途用いられ、害虫や微生物を抑制する効果をもってい る。しかし、人の健康促進や薬としての効用については、 プラスにはたらくものとマイナスの効果をもつ成分が同 時に含まれている可能性が高い。いずれにせよ漢方薬的 なファジーさを含んでいる。
 しかし、こういった木炭の効用について、ウソとホン トが混在していると思われるにもかかわらず、使ってい てなんとなく安心できるのはなぜだろう。これは、木炭 というものが自然の木材からつくられ、古くから人にな じんできたものであるからではないだろうか。感覚的に 安心できる材料-こういった認識はきわめて大切ではな いだろうか。