今村祐嗣のコラム

エコ住宅

このキーワードは、私のつとめる研究所が数年前から 研究プロジェクトとして取り上げているもので、はたし て一般的に使われているのか、あるいは他のところでも 謳われているのかはっきりとは分からない。われわれの 目指す“エコ住宅”は、地球上で最も環境負荷が小さく, かつ理想循環系の形成が可能な木材に立脚した高機能・ 高耐久型の住宅、と定義づけている。ということになると、 十分な機能をもつがエネルギー消費の低い部材開発、適 切な維持管理が可能な建築工法の開発、あるいは資源リ サイクルが容易にできる建て方やシステムの構築などが 課題となる。
 こんなことを思っていると、先日の新聞に日高敏隆先 生(総合地球環境学研究所長)の“エコばやり”という コラムが掲載されていた。人々が環境に配慮するように なったことに賛意を表しながら、エコツァーやエコグッ ズという言葉に代表されるような表層的な、免罪符的な 現在のはやり言葉をちくりと批判されている内容であっ た。先生によると、エコなる語が由来しているエコロジー という名前は、今から150 年近く前にドイツの生物学者 が生物と環境との関係する学問(生物の家計)として唱 えたもので、エコはもともと“家”という意味だそうで ある。経済学(エコノミックス)も同様に「家計」とい う用語に基づいているらしい。
 そうするとエコ住宅は、まさに“家計を考慮した住宅” ということになる。住宅資材として木材を利用すること は地球の家計に、国産材の使用を押し進めることは国の 家計に役立つと思えばとても分かりやすい。快適であり ながら住んでいる間はエネルギー消費が少なく、そう短 期間で取り壊すことのない住宅は家庭の家計を助けるこ とになる。解体が容易で廃材リサイクルが可能となると、 これは社会の家計を十分慮った住宅である。
 環境にやさしいと言葉からも何やらうさんくさい感じ を受ける場合があるが、家計を考慮した環境との共生と いうことであれば納得できそうな気がする。エコ住宅も “家計にやさしい住宅”と考えていきたい。