今村祐嗣のコラム

シロアリ

この季節、シロアリの群飛がよく見られる。大体、ヤ マトシロアリでは4 ~ 5 月の日中、イエシロアリでは6 ~ 7 月のムッとした日の夕暮れから夜間にかけて、無数 の羽アリが飛び立つ。羽アリはシロアリ社会の大多数を 占める職アリや兵アリと異なって生殖能力をもち、カッ プルとなってニューファミリーをつくっていく。
 このシロアリによる被害の防除に最近新しい取り組み がみられる。住まいのシロアリ防除に用いられてきた薬 剤は、有機塩素系のクロルデンが禁止されて以降、有機 リン系のものが中心であった。薬剤を床下土壌に散布す ることによって、住宅内へのシロアリの侵入を防ぐとい う方法である。しかし近年、室内の空気環境への関心が 高まるにつれて、防除薬剤による匂いの問題が特にクロー ズアップされてきた。このため、薬剤をマイクロカプセ ルで包む方法、砂に含ませて粒剤にする方法、薬剤を混 入したシートを用いる方法なども用いられてきたが、新 しい薬剤への転換やレスケミカル、ノンケミカルの取り 組みも試みられてきている。
 床下にコンクリートを敷き詰めるという方法もシロア リの侵入防止に有効だが、品質の悪いものや長期の使用 でヒビ割れが発生するようなものでは効果がない。むし ろシロアリは隙間を好む傾向があるのでやっかいである。 ハワイやオーストラリアなどでは、シロアリが貫通でき ない粗さの金網を床下に敷設する方法、あるいはシロア リが口で運べない程度に大きく、かつ間隙を通過できな いほど小さなサイズに揃えた砂を敷く方法も実用化され ている。また、わが国でも、シロアリを誘因して餌木と 一緒に遅効性の薬剤を食べさせ、巣に持ち帰らせて後、 薬剤の効果を伝染させてコロニー全体の活性を低下させ るベイト法という手法も行われている。
 一方で、調湿材などによる床下環境の改善、天然物の 利用、昔ながらの蟻返しの応用なども検討されているが、 場合によっては薬剤処理のように万能でないものもある。 シロアリの行動生態を十分理解した上での施工や、被害 の探知技術の利用がどうしても必要となろう。
 日本から移ったと考えられるイエシロアリのアメリカ 本土における猛威、アメリカ原産のアメリカカンザイシ ロアリのわが国での発見と被害の発生、ヨーロッパでの シロアリの分布の拡大など被害も国際的な広がりをみせ ている。住まいへの被害だけでなく、地球の循環系に大 きなプラスの役割を担っているシロアリとの共生が求め られている。