研究所の統合
筆者の所属する京都大学生存圏研究所は、昨年の4月に旧木質科学研究所と同じ京都大学の研究センターであった旧宙空電波科学研究センターが大学の法人化と時期をあわせて統合・改組した新しい研究所で、人類を取り巻く環境を人間生活圏、森林圏、大気圏、宇宙圏としてとらえ、それぞれが抱える課題を解決し将来の展望を切り開くことをミッションとしている。生活圏と森林圏をどちらかといえばわれわれの旧木研が、大気圏と宇宙圏を旧宙空がカバーするということであるが、もちろん両者が融合して新たな学問分野を開拓して生存圏科学を打ちたてようという目標をもっている。
いくら研究所同士が統合しようといっても、もうちょっと近いところと、という周りからの怪訝な意見も当初は聞かれ、実際、開所式典の挨拶でも「木に竹を接ぐ、ということはよく聞くが、木に空を接ぐのは。。。」という言葉をおっしゃった先生もおられた。このご挨拶は激励の意味を込めて話されたものであるが、その後の動きはきわめて順調で、お互いに刺激しあうところも多く、研究に対する所員の活性化も一段とすすんでいる印象を強くもっている。木と空といっても、宇宙太陽光発電や大気の気象解析を主要な研究テーマとしてきた旧宙空と、森林・樹木や木材を研究対象としてきた旧木研では、
マイクロ波を利用して曲げたスギ材の内側(圧縮部分)の走査電子顕微鏡写真
「太陽」という人類の“持続的な生存”にかかせない共通のキーワードをもっている。その後の世の中の動きをみていると、この”持続性“、
英語ではサステイナブルという言葉が今後の人類社会には欠かせないものとして頻繁に使われるようになったことを思うと、われわれの研究所の統合も的をえていたものと自負している。
もちろん、われわれは農学部系であるが、相手側は工学部の電気や理学部の地球物理の出身の方が大半を占め、研究の対象だけでなく発想の仕方や解析の手法においても異なるところが随分とみられる。しかし、近き他人(実際、建物は京都大学の宇治キャンパスで隣接していた)と結婚してみると、研究の中身においても案外共通に思うものが次々とでてきている。その一つであるマイクロ波について書いてみたい。
マイクロ波
先に述べたように旧宙空の主要な研究テーマの一つに、宇宙空間の人工衛星上で太陽光発電を行い、それを地上に伝送して将来のエネルギー供給をやろう、というものがある。宇宙での太陽光発電は効率の上で大変すぐれているのは素人の私でも理解できるが、問題はいかに電力を地表に送って生活に使えるエネルギーに変換するというところにあるらしい。その有効な方策として考えられているのが電波の一種であるマイク波を利用するもので、地表にアンテナと整流器を組み合わせたレクテナを設置し、宇宙から送られてくるそれを受けて電力に変換しようというものである。
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