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塗装による保護
さて、表面の耐候性を向上させるには、住まいの場合は庇などで光や雨水を遮るのがまず先であるが、それができない場合は塗装によることになる。風雨に曝されるエクステリア材料では特に表面の劣化防止が重要である。しかし、屋外使用の木材では塗膜とそれによる耐久性維持が大変難しい。これは、木材が親水性材料であること、軟らかく複雑な表面形状をもっていること、それに紫外線の劣化を受けやすいことなどによるが、塗膜の下に繁殖するカビ類などの微生物が発生しやすいことも原因となっている。
木材の保護塗装は、塗膜を形成する造膜タイプと浸透性の含浸タイプに分類できる。塗装面の耐久性という点では、造膜タイプが含浸タイプに比べてやや長いが、含浸タイプのものは木材の質感をある程度残すことができ、メンテナンスが比較的容易であるという利点をもっている。また、塗膜の耐久性は、日射量や雨量の影響を大きく受けるため地域によっても差異が著しいばかりでなく、設置された場所の方位や位置関係、あるいは施工された季節によっても劣化速度が異なる。一般的にいうと、紫外線を防ぐことが耐久性向上のためには重要であり、光安定化剤を加えることによってももちろん向上するが、顔料の多いものほど、色の濃いものほどすぐれている。ただ、ここで問題なのは日本人にとって木目基調の白木塗装が好まれるということだ。暴露実験を行うと、歴然と透明系のものは紫外線で劣化しやすい。
中華人民共和国新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠内にある二ヤ遺跡で発見された木製住居址(木製の骨格部分を土で固めた住居)
日中共同二ヤ遺跡学術調査隊の一員として伊東隆夫氏(京都大学生存圏研究所)が1994年10月に現地調査を行った折に撮影された住居址である。
塗料そのものの性能以外に、塗膜の耐久性には基材である木材側の状態が大きな影響を及ぼすようだ。熱や水分によって寸法変化が小さいのが望ましいことはいうまでもなく、いかに基材の寸法安定性を上げるかを考慮すべきである。また、木材の表面性状が塗膜の耐久性に大きな影響を及ぼす。うっかり見過ごしてしまう点は、表面を削ってからすぐ塗装せずに放置しておくと、前に述べたように紫外線によって表面組織の劣化が生じる。塗装直後は意識されないが長期間置いておくと塗膜の耐久性に大きな違いがでてくる。一方、表面の仕上げは平滑であればあるだけ良いとは限らない。特に含浸タイプの塗料の場合、木材表面に付着される量が粗面の方が多く、結果的に耐久性も高くなる。まさに、塗装、特に保護塗装こそ思いやりと気遣いで慎重にやるべきであろう。
だが最も大切なのはメンテナンスであり、一度塗ったら放っておくのではなく、診断と保守を忘れてはいけない。早め早めの塗り替えが結果的に耐久性を向上させることになるのは、お肌のお手入れと同様であろうか。